沿革

名誉会長のご挨拶

 

(2009年11月3日)

この学会は1956年に創設され、今日まで53年の歴史を刻んできました。3年前に創立50周年の記念大会をすませ、目下学会第2期の発展を期して、日々邁進しているところです。

そもそもこの学会は、研究における大学連携を目ざし、あわせて研究者の研究促進を期すべく、発足しました。幸い、会員一同の努力によって、この目的を充足させつつ、歴史を築いてこられたことに、私は深く感謝の念をいだいております。

そこで今後の学会が目ざす方向がここにあることに、変りはありません。

ただ昨今、大学は大きく変動しつつあります。まずは少子化による研究の先細り現象が予測されます。入学者数が減れば学科の規模は縮小され、配属の教員が減れば、研究者はそれだけ減少し、学術研究の前途にかげりが兆しはじめます。

私たちはこうした現状を直視し、いかに良質の学術を保持していくかを真剣に考える必要があります。研究の使命は数にあるのではなく、質の向上にあるでしょう。大学の外的制約をこえて輝かしい研究者であることを目標とし、少数といえども有意な青年に文学語学のすばらしさをあたえることを念願としたいと思います。

またこの学会の第2の目的は、日本文学語学の全体を対象とするところにあります。他の学会が多くジャンルや時代を限定したものである点で、この目的はきわめて独自であります。目下、会員はこの点を大きなメリットとして、研究に励んでおります。

なぜなら範囲の広さは、個別の主題の分母の大きさであるからです。物の観察には、微視と巨視が必要です。ともどもに一方を欠けば、すべては真の姿を見せてはくれません。

たとえば目だけの写真を見て、それが誰であるかを当てることは、至難のわざです。一方で大きな写真の中にぽつんと点である人が誰であるかも、きわめて解りにくいでしょう。

会員たちは大会の研究発表の後で、この学会のこの利点を、期せずして口々に述べます。

私たちは以上の特色をどう拡大していけるか、日夜熱心に工夫しています。学会三賞(全国大学国語国文学会賞、文学・語学賞、研究発表奨励賞)も制定されています。学会誌『文学・語学』も年3回刊行され、会員は誰でも投稿でき、実篤な審査が受けられます。年2回の大会も多数の人びとが集まり、懇親会にいたるまで、熱心な学術交流が行われます。

学会の運営も、役員はすべて選挙によって選ばれ、とくに2009年からは大幅に若がえった、もっとも旺盛な年代の研究者が当っています。  以上の趣旨に賛同して下さる皆様の学会参加を心からお待ちしております。会員は大学在職者に限るわけではありませんので、どなたでも会則を御覧の上、お申出下さい。

中西進(なかにしすすむ)
文化功労者。京都市立芸術大学名誉教授、富山県立高志の国文学館長、京都市中央図書館長、堺市博物館長。万葉集の比較文学的研究を中心に、日本文学・文化を広く研究。『中西進万葉論集』(講談社)、『中西進著作集』(四季社)、『万葉集全訳注原文付』(講談社文庫)など。

学会の歴史

昭和30(1955)年

9月3日

準備委員会開催。学会結成のことや機関誌発行をはじめとする事業についての方針の大綱を決定する。各大学の国語国文学研究室代表者に発起人となることを依頼する。

昭和31(1956)年

1月15日

発起人会並創立総会を東京学芸大学竹早分校会議室にて開催。斎藤清衛氏が議長を務め、会則を審議決定し、役員を選出。最初の事務局は、東京学芸大学国語研究室に置かれる。これより後の理事会で久松潜一氏を代表理事に選任。

昭和31(1956)年

6月24日

第1回公開講演会・研究発表会を、東京大学法文経36番教室で開催。

昭和31(1956)年

9月15日

機関誌『文学・語学(季刊)』創刊号を、三省堂出版より刊行。A5判180頁。
誌名「文学・語学」は常任理事会での高木市之助氏の発案による。創刊号の編集は理事会の委嘱により、常任理事全員があたり、高木市之助氏を中心として、井本農一氏・大城富士男氏・成瀬正勝氏が企画・構成などを担当、関係事務は、委員の石丸久氏・太田善麿氏・橋本芳一郎氏があたる。
『文学・語学』は季刊とし、内容は、①依頼論文、②各大学関係新進研究家の論文(役員推薦)、③前年度における各大学の紀要・研究報告と各学会誌掲載論文の要旨、の三部構成として出発した。当初、国語国文学の学会誌としては珍しい市販のスタイルをとった(現在は、会員にのみ頒布)。

昭和32(1957)年

6月15日

第1回「大学連絡研究協議会」を開催。(第2回は、翌年6月14日)
1.各大学における研究成果刊行物(紀要など)の総集をはかること
2.各大学所蔵の関係重要文献(書簡・筆蹟などを含む)などの総合目録を作成すること
3.各大学研究室の利用について相互に便宜の供与をはかること
などが提案される。1、2は、のちの「国文学研究資料館」構想の伏線となる。

昭和33(1958)年

編集委員会が設置される。

昭和34(1959)年

全国大学国語国文学会研究史大成編纂委員会編『国語国文学研究史大成』(全15巻)を三省堂より刊行開始(~昭和40(1965)年)。

昭和43(1968)年

全国大学国語国文学会監修『講座日本文学』(全13巻、別巻1)を三省堂より刊行開始(~昭和46(1971)年)。

昭和51(1976)年

市古貞次氏、第二代代表理事に就任。

昭和62(1987)年

6月13日

総会にて、年2回行われる大会の2日目の研究発表会の1回を、テーマを決めて研究発表者を募集するという新形式で行うことを決定する。昭和62年度秋季大会は「転換期と文学」(ただし、秋季大会を新形式とするのはこの大会のみ)、昭和63年度春季大会は「日本文学と虚構」をテーマとする。

平成10(1998)年

6月

将来構想委員会を設置(~平成11(1999)年7月)。

平成11(1999)年

6月

中西進氏、第三代代表理事に就任。

7月

ワーキンググループ委員会発足(平成13(2001)6月)。

平成12(2000)年

6月

会則を改正(顧問の設置、評議員の廃止など)。大会の開催時期を夏季大会:6月第1土・日曜日、冬季大会:12月第1土・日曜日に。

平成13(2001)年

9月

機関誌『文学・語学』は第170号から、年3回刊行となる。内容も刷新(研究特集号・講演特集号は廃止し、学会展望号も2冊を1冊とし、2回の大会のシンポジウムの記録を掲載する)。

平成14(2002)年

6月

「理事・監事の選出内規」「推薦による常任理事の選出内規」「選挙管理委員会内規」を決定(これにより会則改正)。

7月

第1回の本学会創立五十周年記念事業特別委員会を開催。連続記念講演・シンポジウム、式典、記念展示、『文学・語学』特集号、記念出版、賞の設定を計画する(その後、講演・シンポジウムの統一テーマは「新しいテクスト学の構築をめざして」に決まる)。

平成16(2004)年

6月

総会において大学院在籍者(研究生を含む)に対する会費減免が決定(これにより会則改正)。

12月

冬季大会において第1回研究発表奨励賞が授与される。

平成18(2006)年

6月3日

五十周年記念式典を挙行。皇太子徳仁親王殿下のご臨席を賜る。この時に開催された記念大会の総会にて、「代表理事」を「会長」に変更(これにより会則改正)。中西進氏、初代会長に就任。
第一回全国大学国語国文学会賞が授与される。
五十周年記念事業として、全国大学国語国文学会編『日本語日本文学の新たな視座』をおうふうより刊行。記念展示「百人一首―原典とその享受―」を行う。
五十周年記念特集号として『文学・語学』第185号が刊行される。

平成19(2007)年

6月

役員名称について、「理事」を「委員」に、「常任理事」を「常任委員」に変更(これにより会則改正)。

平成20(2008)年

6月

文学・語学賞が制定される。

12月

「会長の選出内規」を定め、会長を会員の直接選挙による選出とすることが定められる。その他の内規も一部改正(これにより会則改正)。「推薦による代表委員の選出内規」が定められる。

平成21(2009)年

6月

会長・委員・代表委員・監事すべてが、選挙により選出される。

12月

学会のホームページがリニューアルされる。

平成22(2010)年

6月

夏季大会において第1回文学語学賞が授与される。

平成25(2013)年

7月

常任委員会に六十周年記念事業担当が置かれ、六十周年記念事業が正式に始められる。

平成26(2014)年

1月

六十周年記念事業として[Ⅰ]記念講演会[Ⅱ]六十周年シンポジウム[Ⅲ]『文学・語学』特集号の刊行、を行うことが決定する。

平成27(2015)年

4月

六十周年記念事業実行委員会が設置される。

平成28(2016)年

4月

日本文学関連学会連絡協議会に正式加入。

6月

六十周年大会が青山学院大学で挙行される。テーマは「日本とインドー文明における普遍と固有―」。記念講演はハーバード大学教授スガタ・ボーズ氏。六十周年パネルディスカッションは「日本とインドを結ぶー交流の過去・現在・未来―」。通常の研究発表の他、パネル発表が行われた。

平成29(2017)年

7月

ワーキンググループが設置され、中西会長より「常任委員会構成ならびに運営適正化の件」についての諮問書が交付される。

平成30(2018)年

4月

ワーキンググループより答申が提出される。

6月

答申の大綱が総会によって承認される。

12月

答申の内容の一部を実現するための諸規則制定・改正を臨時総会にて承認。

平成31・令和元(2019)年

6月

総会において中西進氏が名誉会長に選出される。

7月

新制度により会長に代わり、学会代表として河添房江氏を選出。

12月

『文学・語学』をJ-STAGEに登載することを臨時総会にて議決。第227号から各号が刊行一年後にJ-STAGEに登載・公開されることになった。

令和2年(2020)年

6月

コロナウイルスの感染症の影響で夏季大会を中止。総会は書面議決で実施。

12月

コロナウイルスの感染症の影響で冬季大会をシンポジウムのみテレビ会議システムZoomを利用して開催。

令和3年(2021)年

1月

J-STAGEの登載・公開が開始。(『文学・語学』第227号より)

6月

コロナウイルスの感染症の影響で夏季大会をZoomを用いて遠隔で実施。

12月

冬季大会を國學院大學を会場にしてZoomを用いて対面・遠隔のハイブリッド形式で実施。

令和4年(2022)年

11月

学会のホームページがリニューアルされる。