2023年夏季大会(127)

第127回 令和5年度 夏季大会

開催日・会場

令和5年6月24日(土)・25日(日)・26日(月)(26日の文学実地踏査は各自・各グループでお回りください)
中京大学 名古屋キャンパス(〒466-8666 愛知県名古屋市昭和区八事本町101-2)
○会場とZoomによるハイブリッド形式で行います。  アクセス

*申込み締切:6月17日(土)※申し込みは締め切りました。

大会プログラム

大会テーマ

視覚化される文学―視覚的享受の多様性とその意義―

 現代、様々な形で享受されている文学作品について、今大会では比較的享受者層が広い視覚的享受の問題をとりあげます。国宝『源氏物語絵巻』をはじめとして、絵画化に芸能化、近現代における映像化にいたるまで、幅広い視覚的享受がこれまで成されてきました。

 こうした視覚的享受は、文学作品理解を深めるために利用されることが多い一方で、視覚化されることでその作品世界との齟齬を生じたり、作品世界のイメージが視覚化されたものによって固定化されたりする危険をはらんでもいます。本テーマは、文学作品の視覚的享受について、改めて文学の側から視覚化による理解の意義を考え、領域横断的な作品理解を試みようとするものです。

コーディネーター/司会  中京大学教授 勝亦 志織

第1日 6月24日(土) 

10:30~11:45

代表委員会 412教室(4号館1階)  キャンパスマップ

12:00~12:45

委員会 412教室(4号館1階)

12:45~

会場 431教室(4号館3階)
受付(Zoom開場 13:00~)

13:30~

開会

学会代表挨拶 和洋女子大学教授 吉井美弥子
会場校挨拶  中京大学文学部長 柳沢 昌紀

13:45~14:45

基調講演

『枕草子』が書かれた時代を映像に描くとき、もっとも大きな力となるのは『枕草子』そのもの

アニメーション映画監督 片渕 須直

14:45~15:00

休憩

15:00~17:45

シンポジウム
(「大会案内・要旨集」において、シンポジウムの時間表記に誤りがありました。上記が正しい時間となります。)

時代考証と創作のあいだ―実践者の立場から

学習院大学准教授 千野 裕子

 絵画であれ、映画・演劇であれ、視覚化というのは創作者による翻案行為である。本報告では、視覚化における時代考証と創作との関係について考えたい。
 古典文学を何らかの形で視覚化する際には、いわゆる時代考証を必要とすることがあるだろう。しかし、時代考証によって得られた結果に限りなく近づけることを目指すのか、それとも「見立」のように別の形に置き換えるのか、その判断は視覚化を行う翻案者にゆだねられることになる。教材としての利用など、作品理解においては前者のタイプの作品の方が有効であるようにも思われるが、後者のような作品も無視できないのではないか。時代考証の結果とはまるで違う創作がなされていたとしても、大胆に翻案された作品を享受することによってむしろ作品理解が深まるということがあり得るだろう。
 報告者は、これまで小劇場で日本古典文学を演劇化するという活動を細々と行ってきた者である。演劇というのは視覚のみによる芸術ではないが、本報告では衣装・舞台装置・照明・宣伝美術などの視覚面に注目し、当事者としての立場からこうした問題を考えてみたい。


近世絵入り歌書の出版―視覚化された古典和歌―

名古屋市立大学准教授 加藤 弓枝

 周知の如く、日本で初めて挿絵入りで刊行された古典文学作品は、慶長十三年(一六〇八)に出版された嵯峨本『伊勢物語』である。嵯峨本は特権階級において受け入れられたと思しいが、その後の寛永年間以降には続々と主要な古典文学が出版された。つまり、商業出版が発展した江戸時代前期以降、大衆に古典が開放されたのである。
 鈴木健一氏は、近世は絵画的なものが人々の生活に浸透していった時代でもあり、想像する余地の大きい文学と、一瞬にして映像を喚起する絵画、両者をどう組み合わせて知的に表現するかについて技巧を凝らすことは、この時代に広く行き渡った手法だったと指摘する(『近世文学史論』岩波書店、二〇二三年)。
 そこで、本発表では近世期の絵入り歌書に注目し、権威とされていた教養が、挿絵入りの版本によっていかに庶民層へ浸透していったかについて考察をする。とくに古典和歌の世界を絵画化した歌意絵に注目したい。現代においても、アニメ・漫画・ゲームといった視覚化されたものによって古典文学に親しむ文化があるが、その淵源のひとつに歌意絵は位置づけられよう。絵画化することによって、親しみにくい古典和歌の世界を、鑑賞しやすいものへ変えることができるが、視覚化することは読者の解釈の幅を限定することにも繋がる。そこで、歌意絵などの絵画化された具体例を挙げつつ、古典和歌の視覚化がもたらした功罪について言及したい。


文学作品をヴィジュアル化する際の「文法」―「春琴抄」を視座として― 

中京大学教授 酒井 敏

 谷崎潤一郎の「春琴抄」(一九三三〔昭和八〕年)を素材に、文学作品のヴィジュアル化について考え、本シンポジウムのテーマに応えたい。本発表では、繰り返し制作されている映画化作品の中から①「春琴抄 お琴と佐助」(島津保次郎監督・一九三五年)②「讃歌」(新藤兼人監督・一九七二年)③「春琴抄」(金田敬監督・二〇〇八年)を取り上げ、さらに④笹倉綾人による漫画化作品『ホーキーベカコン』(KADOKAWA 二〇一九年三月~一一月)を加えて、各作品の創作意図や方法、時代との関わりを考える。同一作品のヴィジュアル化を追跡することで、鑑賞・享受する側のニーズの変化などについて考える視点も示せよう。
 ヴィジュアル化によって、それぞれが新たな作品に生まれ変わっていることは言うまでもないが、①では検閲と以降の映画化作品の基調となる「アイドル映画」の問題、②では「言語表現/映画表現」「見ること/見られること」など原作への挑戦と対話、③では主人公として提出される「お仕えされたい佐助」と観客に対する意識、④では研究状況との対話、などについて「原作」という参照系を意識しつつ考察する予定である。
 芸術選奨新人賞を受けた佐藤未央子氏の『谷崎潤一郎と映画の存在論』(水声社 二〇二二年四月)を始め、谷崎や彼の作品(「春琴抄」だけでなく)と映画との関係を主題とする先行論は数多い。それらの論点を深めることより、ここで「文法」と呼んだ多くの具体的な観点を通して本特集のテーマを多様な関心に開く発表とすることを目指すつもりである。

 

 

第2日 6月25日(日)

10:00~

受付(Zoom開場 10:15~)

10:00~15:00

研究発表会 A・B 2会場
(「大会案内・要旨集」から、A・B両会場ともに教室が変更となりましたのでご注意ください。)

A会場 132教室(1号館3階)
10:30~11:50
  • 中上健次『火まつり』論―達男を媒介として天皇制を読む―
      中京大学非常勤講師  佐藤綾佳
  • 志向/試行される〈田園〉─佐藤春夫・廣田花崖を中心に
      早稲田大学大学院生  伊東弘樹
11:50~13:00

休憩

13:00~15:00

国際特別企画

  • 和泉式部の和歌における「詩の主体(lyric subject)」 ―『和泉式部続集』「五十首歌」を中心に―
      パリシテ大学・東アジア文明研究センター(CRCAO)院生  ベネゼ・リズ
  • 寛政改革以後の黄表紙再考―山東京伝作『人間一代/悟道迷所独案内』の文学的価値
      慶應義塾大学大学院特別短期留学生  ジョセフ・ビルズ
  • ヨーロッパにおける最初の『萬葉集』翻訳―アウグスト・プフィッツマヤーによるドイツ語訳と文字法― 
      パリ国立高等研究実習院院生  デフランス・アーサー
B会場 133教室(1号館3階)
10:30~11:50
  • 古典教育におけるアニメーションの活用―アニメーション制作ソフト「VYOND」の活用―
      中部大学大学院生  樗木宏成
  • 魅力ある古典教育を探る―『伊勢物語』「芥川」を例に
      中京大学大学院生  増田祐希
11:50~13:00

休憩

13:00~14:20 
  • 大原野の右大将鬚黒―『源氏物語』「行幸」巻におけるその位相をめぐって―
      國學院大學大学院生  亀谷粧子
  • 家の風攷―家成立史との相関と用法の展開―
      佛教大学講師  神原勇介
15:30~16:30

A会場 132教室

学会三賞授与式

全国大学国語国文学会賞:該当者なし

文学・語学賞:仲谷健太郎氏(宮城教育大学)

研究発表奨励賞:伊東弘樹氏(早稲田大学大学院生)

総会
閉会の辞 中京大学教授  勝亦志織