次回大会案内

第130回 令和6年度 冬季大会

開催日・会場

令和6年12月7日(土)・8日(日)・9日(月)(9日の文学実地踏査は各自・各グループでお回りください)
東北大学 (〒980-8576 宮城県仙台市青葉区川内27-1) 会場:キャンパスマップCエリア C18中講義棟
○会場とZoomによるハイブリッド形式で行います。  アクセス

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*申込み締切:11月29日(金)

大会プログラム

大会テーマ

近現代作家と王朝物語文学──『源氏物語』との関係を考える

 「日本の小説は源氏にはじまって西鶴に飛び、西鶴から秋聲に飛ぶ」──この川端康成の徳田秋声評に象徴されるように、『源氏物語』は日本の小説史において起源として位置づけられ、さらには小説にとどまらない多種多様な文芸コンテンツを生み出すなど、こんにちまで大きな影響をもちつづけています。
 本学会ではこれまで、近現代文学と古典文学の交渉について、翻案や二次創作、さらにはコンテクストの問題とも斬り結んで、幅広く議論を展開してきました。が、ここでいま一度、古典文学とりわけ『源氏物語』に焦点を合わせることで、近現代作家にとって『源氏物語』とはいかなる存在だったのかという根源的な〈問い〉に、真正面から向き合いたいと思います。『源氏物語』に取り組んだ近現代作家の営為を考えることによって、新しい研究テーマへの跳躍を試みます。

コーディネーター/司会  東北大学教授 横溝博

第1日 12月7日(土) 

12:00~13:00

代表委員会 文学部第二講義室 キャンパスマップ キャンパスマップ Cエリア C18中講義棟

13:15~13:45

委員会 文学部第二講義室

13:45~

会場 文学部第一講義室
受付(Zoom開場 14:00~)

14:30~

開会

学会代表挨拶 大東文化大学教授 藏中しのぶ
会場校挨拶  東北大学大学院文学研究科長 木村敏明

14:40~14:50

趣旨説明

コーディネーター/司会 横溝博

14:50~15:00

シンポジウム

文章芸術としての復権 ──谷崎潤一郎にとっての『源氏物語』

同志社女子大学准教授 大津直子

 「源氏の身辺について、こういう風に意地悪くあら捜しをしだしたら際限がないが、要するに作者の紫式部があまり源氏の肩を持ち過ぎているのか、物語の中に出てくる神様までが源氏に遠慮して、依怙贔屓をしているらしいのが、ちょっと小癪にさわるのである」――谷崎潤一郎は最晩年、このような「にくまれ口」を叩いている。それならばなぜ、谷崎は創作の時間を割いて「小癪にさわる」作品を繰り返し訳したのだろうか。今年の二月、発表者は三つ存在する谷崎源氏のうち、戦時下に出版された最初の訳(通称〈旧訳〉)と、戦後に出版された第二の訳(通称〈新訳〉)について考察した拙著を上梓した。執筆の過程で見えてきたのは、日本文の美しさが当時の若者に継承されていないという危機感から谷崎が『源氏物語』を訳す決意をしたという事実である。
 〈旧訳〉は特徴的な訳で、光源氏と藤壺との密通に代表される、戦時下に不穏当とされた筋書きが訳出されていない。それを修正、全訳化したのが〈新訳〉である。現在我々が手に取る谷崎源氏の訳文はほぼ〈新訳〉で完成し、仮名遣いをあらためた第三の訳(通称〈新々訳〉)が現在も文庫本などで流通している。〈旧訳〉は国粋主義に迎合し削除の憂き目を見た不完全な作品と見なされ、その存在がほぼ忘却されてきた。しかし〈旧訳〉にこそ訳業を通して谷崎が目指したこの仕事の真髄がある。谷崎は〈旧訳〉のことを原文の「流麗さ」を再現しようとした「文学的翻訳」と呼んだ。「現代語訳」ではない、翻訳である、という真意はどこにあるのか。また、「流麗さ」は具体的にどのように訳文に反映されているのだろうか。
 この度は谷崎潤一郎の試みを通して、近現代作家にとって『源氏物語』とはいかなる存在だったかという大きな問いに応答したいと考えている。


三島由紀夫の小説と、『源氏物語』を鏤める手法

学習院高等科教諭 伊藤禎子

 三島由紀夫の作品には、多くの『源氏物語』が鏤められている。たとえば『近代能楽集』には、その名も「葵上」という作品がある。謡曲「葵上」を翻案したものであるが、謡曲も『源氏物語』を翻案したものである。『源氏物語』第一部の話題である、六条御息所と葵の上の車争いに始発した、御息所の嫉妬劇が繰り広げられるテクスト群であるが、それぞれの創られ方は異なる。謡曲では、葵の上への嫉妬をあからさまに描き、かつ、その執念が仏教の力によって平癒されるのがゴールとなる。三島による戯曲「葵上」では、光源氏をモデルとした「若林光」が登場する。女性の嫉妬劇の中心に、当の男性が登場すれば、おのずと主題は変わってくる。なお、男性・光が登場するのは、原作『源氏物語』と共通する。そこにどのような差異があるのか。ほかにも、『源氏物語』の影響としては『豊饒の海』がある。「春の雪」で、出家した聡子に本多繁邦が逢いに行った際、廊下をはさんだ向こうの部屋ですすり泣く聡子や、「天人五衰」で、繁邦の詰問に対し、清顕を知らないと言い放つ聡子は、『源氏物語』の浮舟が下敷きとなっている。そもそも、清顕が「至高の禁」を願って、治典王殿下との結婚の勅許がおりた聡子と男女関係を持つのは、柏木を彷彿とさせる。柏木については、ほかにも『金閣寺』という作品がある。三島は『日本文学小史』で、『源氏物語』のことを、「文化意志そのものの最高度の純粋形態たる「源氏物語」」と讃えている。そして、具体的な巻としては、「人があまり喜ばず、又、敬重もしない二つの巻、「花の宴」と「胡蝶」」を紹介する。愛読者が喜びそうな「須磨」「明石」を避けて、これらの巻をとりあげるのが「三島」である。これらを始めとして、三島由紀夫の小説世界における『源氏物語』の位置づけについて探っていきたい。


川端康成における『源氏物語』再考

東北大学准教授 仁平政人

 川端康成が『源氏物語』を「古今を通じて、日本の最高の小説」(「美しい日本の私」)というように聖典(カノン)として価値づけ、強く意識していたことは頓に知られている。川端は少年の頃から『源氏物語』に触れていたとされるが、その言及が急激に増加するのは戦時中~敗戦後である。特に随筆「哀愁」などで語られる戦時下の「『源氏物語』体験」は、川端における「日本(古典)回帰」の契機となったものとして、研究史において重視されてきた。ただし、川端の『源氏物語』に対する評言の多くは抽象度が高く、同作を具体的にどのように捉えていたのかは必ずしも明瞭ではない。また、短編小説「浮舟」を例外として、川端の小説中で『源氏物語』が直接的に引用されるという事例も見出しがたい。そのことから、従来の研究では『源氏物語』と『雪国』・『千羽鶴』・『山の音』などの諸作を比較し、様々なレベルで影響関係を見出そうとする分析が多くなされている。だが、そうしたアプローチは、川端の『源氏物語』をめぐる語り方を等閑視する側面を有していたのではないだろうか。
 本発表で目を向けたいのは、川端の関心が、『源氏物語』が模倣や作り変えをふくめて広く読み継がれ、文化的に継承され、大きな影響力を有してきたという歴史に向けられていることである。こうした川端の視点は、「日本」の伝統(「心の流れ」)を本質主義的に語るような言説を導くとともに、それを攪乱するような両義的性格を持っていたとみられる。本発表では、川端の『源氏物語』をめぐる言説について、戦時中の活動からの連続性を視野に入れて検討するとともに、「反橋」連作をはじめとする戦後の小説テクストとの関連について考察を行う。それは川端の所謂「日本(古典)回帰」の内実を再考することにもつながるはずである。

16:30~16:50

休憩

16:50~17:50

共同討議

 

第2日 12月8日(日)

9:00~

受付(Zoom開場 9:15~)

9:30~15:20

研究発表会 A・B 2会場 キャンパスマップCエリア C18中講義棟

A会場 文学部第一講義室
9:30~12:20
  • 『古事記』のウケヒとウケヒに類似する行為について
      大東文化大学大学院生  峯岸加奈
  • 『古事記』神武天皇条の歌三首考 ──「将撃登美毘古之時」の歌──
      東京都立大学大学院生  村上倫子
  • 上代氏族伝承の形成と展開をめぐる一考察 ──記紀における石上伝承の受容例から──
      学習院大学大学院生  長見菜子
  • 如幻明春の教化意識 ──『夷堅志和解』を中心に──
      龍谷大学大学院生  岩間智昭
12:20~13:20

休憩

13:20~15:20
  • 『今様伊勢物語』に見る仙果の嗣作のあり方 ──『今業平昔面影』と比較して──
      大阪大学大学院生  樋口純子
  • 『古今和歌集』躬恒歌における「高唐賦」──「猿、山の峡に叫ぶ」を中心に──
      東北大学大学院生  丁舒文
  • 『我が身にたどる姫君』忍草姫君論 ──巻一・皇后宮とのつながりに注目して──
      東北大学大学院生  越田健介
B会場 法学部第三講義室
9:30~12:20
  • 雑誌『方寸』における浅草の表象
      宮城教育大学講師  廣瀬航也
  • 小林秀雄「おふえりや遺文」論 ──ランボーのエピグラフをめぐって──
      立命館大学大学院生  佐々木梓
  • 金子みすゞの童謡とその翻訳 ──言語的分析──
      青山学院大学大学院  スベトラーナ・ジガチョーワ
  • 武田泰淳「廬州風景」論 ──中国戦線の表象をめぐって──
      早稲田大学大学院生  魏永珍
12:20~13:20

休憩

13:20~15:20
  • 表現形式から見た現象文の実相
      南九州大学短期大学部専任講師  田中利砂子
  • 現代日本語小説のひらがな表記 ──芥川賞受賞作品から──
      関西外国語大学大学院生   細河紗羅
  • 『言海』と『大言海』における物語文学
      国立国語研究所プロジェクト非常勤研究員   小野春菜
15:35~16:00

A会場 文学部第一講義室

研究発表奨励賞授与式

大会運営委員長挨拶  東北大学教授 横溝博
閉会の辞 大東文化大学教授 藏中しのぶ

参加方法

参加希望者は、下記参加フォームより申し込んで下さい。非会員の方もシンポジウム・研究発表会に参加できます。

大会参加申込フォーム

*11月29日(金)までに申し込んで下さい。

    • 申し込まれた方には、大会の数日前に、メールにて参加のための情報をお伝えします。
    • 大会に参加されるにあたって、発表要旨、オンラインで使用するスライドや動画、配付資料等の著作権は、発表者に帰属します。録画、録音、断りのない再配布、二次利用は禁止とします。

大会参加(オンライン参加含む)情報

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