第133回 令和8年度 夏季大会
開催日・会場
令和8年6月13日(土)・14日(日)・15日(月)(15日の文学実地踏査は各自・各グループでお回りください)
日本大学 文理学部キャンパス (〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40)
○会場とZoomによるハイブリッド形式で行います。 アクセス
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*申込み締切:6月1日(月)→締め切りました
大会プログラム
大会テーマ
文献学の現在と未来
国文学研究においてデジタル・ヒューマニティーズの重要性が説かれるようになって久しい。それは、研究のさらなる発展および国文学研究を推進する研究基盤の拡張の可能性を持つものであろう。TEIを活用した古典籍のデジタル化は、まさにその一つと言いうる。そうした最中にあってこそ、これまでの研究を振り返ることが求められるのではないか。
古典籍のデジタル化ということにあって、その根本を支えるのは、これまでに原本資料に向き合ってきたことの知見である。その研究はいかなる方法で、何を明らかにし、いかに国文学の研究に与してきたのか。あるいは、伝本研究が進められたことで、一つの文学作品に対する研究がどれほどの広がりを持つものになったか。デジタル・ヒューマニティーズの時代において、それらの知見をつなぐことができるか。研究のデジタル化を支えるのは、まぎれもなくアナログな研究であるはずだ。また、デジタルの進展によって、すべてがデジタルに取って代わるのではなく、実物としての資料の価値をあらためて気づかせるものともなるだろう。
各時代における原本資料に基づいた研究成果、その到達地点と現在地を共有し、きたるべきデジタル・ヒューマニティーズの時代と言う未来に向けた一歩としたい。
コーディネーター/司会 日本大学教授 袴田光康
第1日 6月13日(土)
11:00~12:00
代表委員会 3号館 3401教室 キャンパスマップ
12:10~13:00
委員会 3号館 3401教室
13:00~
会場 図書館棟3Fオーバル・ホール
受付(Zoom開場 13:15~)
13:30~
開会
学会代表挨拶 明治大学教授 小野 正弘
会場校挨拶 日本大学文理学部長 岡 隆
13:45~17:00
シンポジウム
コーディネーター・司会 日本大学教授 袴田光康
開かれた/拓いていく本文研究
日本大学教授 久保木秀夫
報告者は中古中世の和歌及び仮名散文に関する古典籍・古筆切の調査研究を専門としている。伝本・本文の調査に際してはデジタル機器・デジタル環境の活用が不可欠であり、「国書データベース」をはじめとする各種Webサイトを最大限に活用して原本資料の所在の把握等に努めてきた。と同時にデジタルカメラによる原本資料の撮影や画像の加工、古筆切データの蓄積、また古筆切の所収情報のデータベース(の元データ)の作成・公開や『日本文学Web図書館』への本文データ提供などをも行ってきた。本文校合に関しても、Web上で数多の原本資料のデジタル画像が公開されていることの恩恵は計り知れない。総じて本文研究とデジタル分野との相性は非常に良いという感触を得続けている。
そうした研究活動の経験に基づきつつ、本シンポジウムでは、原本資料のデジタル画像の閲覧によってどのようなことが分かるのか、どのようなことが可能となるのか、どのようなことがなお分からないのか、アナログだからこそ可能なことは何なのか、といったことについて、いくつかの具体例に基づきながら述べてみたい。また現在報告者はTEIガイドラインに基づく『和漢朗詠集』定家本のテキストデータを試作中であり、その過程で得られた知見などについても言及したい。
本報告を通じて、本文研究の基盤がどれだけ世に開かれているか、また本文研究をこれから先どのように切り拓いていくか、といった論点を浮かび上がらせ、デジタル・ヒューマニティーズの時代における本文研究の可能性について考えてみたい。
中本研究における封切紙という視座
筑波大学特任助教 松永瑠成
インターネット上で公開されるデジタル画像の拡充により、文献調査の利便性は飛躍的に向上した。しかし、画像は閲覧者に均質な情報をもたらすとは限らない。実物の書籍に触れた経験や、原本に関する知見がなければ、画像上では情報として認識すらできないものもある。近世後期の中本(滑稽本・人情本)にみられる封切紙は、その一例である。
封切紙とは「版本で、最初の数丁は披見できるようにして残し、以下の丁を後表紙の見返しの白紙と一続きの袋に作って封じ込み、その袋を切らなければ中を披見できぬようにしていた紙」である(『日本古典籍書誌学辞典』)。中野三敏氏は「洒落本や滑稽本の小本・中本型のもの」の8割がたはこの封切紙を備えており、それらは原則「一冊モノに限って施されている」と指摘している(『書誌学談義 江戸の板本』)。このたび発表者の調査により、上下あるいは上中下など、複数巻から構成される滑稽本と人情本、すなわち中本の大半にも、封切紙やその痕跡が残されていることが明らかとなった。
江戸時代の貸本屋において、封切紙の備わる新刊は「封切」などと呼ばれて珍重され、特別に高額な見料が設定されていた。貸本屋の主力商品であった中本の大半に封切紙が備わっているという事実は、中本が制作の段階から、貸本屋によって購入され、貸し出されることを前提として作られていたことを示している。書籍の流通や受容のあり方が、その制作に直接的な影響を与えていた一例といえよう。このように封切紙の存在は、中本を考える上で重要な視座となり得るのである。
切り取られ、失われていることの多い封切紙だが、その痕跡は実物を見慣れた目であれば、画像上でも識別できる場合がある。アナログな原本研究の知見こそが、デジタル画像から新たな情報を引き出し、新しい視座、そして新しい研究の芽を生み出すという可能性の一端を提示したい。
ホノルル美術館所蔵『十番虫合絵巻』のデジタル公開について
京都産業大学教授 盛田帝子
ホノルル美術館レイン文庫所蔵『十番虫合絵巻』は、天明二年(1782)八月に、江戸の隅田川のほとりの木母寺で行われた「十番虫合」という催しを、テキスト(和歌と判詞)と絵で記録した二軸の巻物である。本資料について、発表者が代表を務めた科研(JSPS JP20KK0006)チームとロバート・ヒューイ氏を中心とするハワイ大学マノア校とで国際共同研究を行い、オンライン輪読会の成果を『江戸の王朝文化復興』(文学通信、2024年)として出版するとともに、「十番虫合絵巻」のウェブサイト(https://juban-mushi-awase.dhii.jp/)でも公開した。ウェブサイトでは、原本の画像・校訂本文・現代語訳・英訳、作品と参加した人々についての解説を掲載し、書籍ではこれに加えて注釈と論文・コラムを収録している。
本シンポジウムの趣旨に基づき、今回はウェブサイトで『十番虫合絵巻』を閲覧するための「虫合絵巻ビューワ」について紹介したい。「虫合絵巻ビューワ」は、『十番虫合絵巻』における様々な要素を記述した上で、虫合・歌合を理解しやすくする表示機能の提供を目指したものである。『十番虫合絵巻』のテキストデータの記述に際し、Unicodeに準拠して文字を正規化した上で、TEI (Text Encoding Initaitive)ガイドラインに準拠したテキストの構造化を行っている。絵巻の画像はIIIFに準拠した仕様で公開した上で、TEI準拠テキストから参照できるようにしている。
「虫合絵巻ビューワ」によって、『十番虫合絵巻』の歌合と虫合の対戦を様々な角度から楽しむことができる。研究のみならず、古典教育にも活用でき、英訳を備えていることによって、英語圏の人々の利用も可能である。本発表では、ウェブサイトを使った授業の実践例を示して、デジタルデータ化したテキストと絵が連動し、現代語訳や英訳を校訂本文と同時に参照できる「十番虫合絵巻」ウェブサイトの意義について考えたい。なお、本ビューワについては、永崎研宣氏の「歌合絵巻テキスト構造化&IIIF画像連携の成果が公開されました」(digitalnagasakiのブログ:2024年3月30日)を参照していただきたい。
デジタル研究環境がもたらす可視性/不可視性――近現代資料の調査の観点から――
千葉工業大学教授 大貫俊彦
近年、文学研究を取り巻く環境は大きく変化している。大学や研究機関、国公立図書館、文学館、新聞社等によるデジタル化事業の進展により、書籍・雑誌の電子化や原資料画像へのオンラインアクセスが飛躍的に拡大した。高精細画像の公開や検索機能の整備は研究の利便性を高め、デジタル資料を用いた研究は今後さらに進展していくと考えられる。こうした環境は研究の深化のみならず普及の面でも意義を持つものであり、筆者自身も日々その恩恵を受けている。 しかしながら、デジタル研究環境の進展は、資料の可視性を高める一方で、従来の現物調査において把握されてきた情報の一部を見えにくくする側面も有している。本報告では、デジタル化がもたらす可視性と不可視性の両面について、近現代資料の調査事例をもとに検討する。
まず可視性の事例として取りあげるのが、昭和の喜劇俳優・古川ロッパ(1903–1961)が残した日記である。本人によって一部は焼却されたものの、昭和9年から昭和35年までの108冊に及ぶ日記が現存する。演劇、映画の活動や文化人との交遊、日常生活の詳細を記した貴重な資料であり、現在は全4冊の書籍として翻刻されているが、編集の過程で収録する日の取捨選択、部分的な削除、改変が行われている。本報告ではこうした削除箇所に注目し、デジタル化によって原資料へのアクセスが可能となることで、本文の歪みやそれに伴う解釈が修正されうることを示す。
次に不可視性の事例として、明治・大正・昭和期に活躍した劇作家、小説家の真山青果(1878–1948)の執筆ノートを取りあげる。青果は既存の日記帳を再利用してノートとしているが、その中には本人によって閉じられたページ等があり、不可視の情報が含まれている。実地調査で気づいた観察を通して、デジタル画像では把握しきれない資料の側面を具体的に提示する。
以上の検討を通じて、デジタル研究環境における可視化の意義を確認するとともに、その限界と現物調査の必要性について考察する。
コメント1
文学通信編集部 岡田圭介
コメント2
文部科学省教科書調査官 幾浦裕之
共同討議
17:30~
懇親会 3号館1階食堂秋桜
第2日 6月14日(日)
9:30~
受付(Zoom開場 9:45~)
10:00~14:55
研究発表会 A・B 2会場
A会場 3号館2階 3205教室
10:00~12:10
- 疫病とその記憶に関する考察
韓国外国語大学校教員 李相旻 - 清少納言像の変遷と〈才女〉言説の行方――『春曙抄』以前以後――
青山学院大学大学院生 内野晴菜 - 「朔日の御よそひ」を贈る末摘花――『源氏物語』「末摘花」巻における「今様色」をめぐって――
國學院大學大学院生 楠田健人
12:10~13:30
休憩
13:30~14:55
- オホクニヌシの国作り説話に於ける国作りと統治の不完全性について
早稲田大学大学院生 太刀川直樹 - 『万葉集』大伴家持「祈雨歌」に見られる「雨」の機能
香川高等専門学校助教 寺尾穂乃香
B会場 3号館2階 3206教室
10:00~12:10
- 説経節から説教源氏節へ――「さんせう太夫」物を中心に――
中京大学大学院生 佐野みどり - 新美南吉「ごんぎつね」における言語/非言語テクストの生成と往還 ――自筆原稿・スパルタノート・挿絵の比べ読みをめぐって――
名古屋大学大学院生 勝倉明以 - 石川淳作品における「わたし」の購読と売文――空襲後の書物を視座に――
早稲田大学大学院生 倉持紗季
12:10~13:30
休憩
13:30~14:55
- 空と海のあいだに――中上健次「岬」論――
創学館高等学校非常勤講師 冨田陽一郎 - 中世における形容詞「ハカバカシ」の用字について――『平家物語』諸本を起点として――
広島文教大学教授 橋村勝明
15:10~16:40
A会場 3号館2階 3205教室
学会三賞授与式
総会
大会運営委員長挨拶 日本大学教授 袴田光康
閉会の辞 明治大学教授 小野正弘
13日から15日の大会期間中、10時から17時まで開館しております
参加方法
- 非会員の方もシンポジウム・懇親会・研究発表会に参加できます。
- オンライン参加の上限は各会場100名です。
参加希望者は、下記参加フォームより申し込んで下さい。
懇親会参加希望者は、下記参加フォームへの申し込みと下記掲載の口座への入金をお願いします。
※当日の参加申込は受け付けません。
会費の入金が確認できない場合はご参加いただけませんので、6月1日までに必ず入金もお済ませください。
大会参加申込フォーム
*6月1日(月)までに申し込んで下さい。→締め切りました
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