機関誌『文学・語学』第244号・近世小特集原稿募集のお知らせ〔2025.1.27〕
[会員限定]
『文学・語学』では以下のような趣旨で投稿論文を募集します。締切は令和7(2025)年3月31日、掲載は第244号(2025年8月刊行予定)です。多くの投稿をお待ちしています。
江戸文芸とメディア
NHKの大河ドラマが蔦屋重三郎という江戸の出版書肆が主人公となる「べらぼう 蔦重栄華乃夢噺」であることが発表された時、インターネットには「誰?」という疑問符があふれていました。鱗形屋孫兵衛・西村屋与八・須原屋市兵衛といった同時代の「版元」のキャストも発表されていますが、もっと知られていない名前ではないでしょうか。番組ホームページの蔦重の紹介文には「貸本屋から身を起こして」とあります。印刷・販売する本屋の他に、貸本屋もあり、新本だけでなく古本や写本の形でも読者の元に届けられていたという江戸時代の書籍流通の様子がわかります。
学校教育の国語の時間に出会う江戸時代の作品はごく限られたものであり、まして蔦重が出版していた絵主体の黄表紙が取り上げられることはないでしょう。近世期に流通していた出版物は小説系だけでなく、和歌や俳諧、浄瑠璃の詞章が書かれた丸本、歌舞伎の筋がわかる絵番付や根本、常磐津や長唄などの稽古本、浮世絵、摺物から文法書、古典作品など多岐にわたっています。出版・流通を支えた本屋によって江戸時代の豊饒な文化は形作られているのです。
今回の小特集では、江戸文芸とメディアを切り口に、小説、詩歌、演劇、美術の各ジャンルの垣根をこえて、江戸文化の研究のありかたを広く考えるきっかけにしたいと思います。映像メディアやインターネットの発達にともない、出版不況と言われ、町中から本屋が消えていく現代ではありますが、そのメディアの変容の著しい現代だからこそ、新たな印刷物を手にすることで知識を広げ、文化を生み出していった江戸時代の出版や流通と文学・語学、文芸との関わりをしっかりとらえていくことが必要だと考えます。会員の皆様の積極的な投稿をお待ちしています。[『文学・語学』第242号掲載]