機関誌『文学・語学』第247号・上代小特集原稿募集のお知らせ〔2025.11.03〕
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『文学・語学』では以下のような趣旨で投稿論文を募集します。締切は令和8(2026)年3月31日、掲載は第247号です。多くの投稿をお待ちしています。なお、応募の際には、小特集への投稿であることを明示してください。
上代文学と都市空間
昨二〇二四年、宮城県の古代城柵であり陸奥国府が置かれた多賀城が創建一三〇〇年を迎えました。また報道の記憶も新しいところですが、「飛鳥・藤原の宮都」が二〇二六年の世界遺産登録を目指し、ユネスコへ推薦されることとなりました。上代において形作られた都市空間遺構が、近年にわかに注目を集めています。
七世紀末の藤原京を皮切りに、平城京、恭仁京、長岡京、そして平安京にいたるまで、複数の都城が造営されました。その内側に目を向ければ、宮が置かれ、条坊と方格地割りとによって街区が設定される、構造化された都市空間があったことがうかがえます。またその空間は、王権・政治の場、寺という信仰の場、中央貴族・官人らの生活の場といった複数の場を内包した、多層的で多面的な性格を持ちます。
さらに、このような都市空間は地方の国庁にも設けられました。殊に大宰府や多賀城は国庁・官衙を軸に道路と諸施設とが一体化した大規模な空間構成を持つことが明らかとなっており、まさに都のミニチュアというにふさわしい環境が築かれていました。そこでは独自の文芸の場も生まれていきます。
一方、都城の外側に目を向ければ、地方と結ばれる道路網(官道)が整備され、駅家などの交通インフラも設置されました。これが地域交流や文物の伝播に拍車をかけることとなります。またその途上には関や剗といった律令制度上の、あるいは山や川といった地勢上の境界が見出され、その境界意識が旅という行為と結びつき、象徴的にとらえられるようになっていきました。さらには、ミヤコ―ヒナという、都市空間を中心に据えて中央と地方とを対照性をもってとらえる認識も生成されていきます。
このように上代においては、都市空間の成立が様々な文化形成の契機となったことが理解できるでしょう。そこで本特集では、都市空間という存在を通じて上代文学を、あるいは上代文学を通じて都市空間という存在を、多角的に分析することを試みます。
会員のみなさまの積極的なご投稿をお待ちしております。
機関誌『文学・語学』第246号・国語学小特集原稿募集のお知らせ〔2025.6.28〕
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『文学・語学』では以下のような趣旨で投稿論文を募集します。締切は令和7(2025)年11月31日、掲載は第246号(2026年4月刊行予定)です。多くの投稿をお待ちしています。なお、応募の際には、小特集への投稿であることを明示してください。
古代語の姿と声を探る
小説や漫画といった創作において古典語を効果的に用いたいという需要が高まり、それに応えるための辞書も登場していると聞きます。例えば、「美しい人」ではなく「きよらなる人」や「艶なる人」と表現してみると、たちまち異なる雰囲気が醸し出されるようです。古典の言葉の意味を探り、知ろうとすることは、私たちの言語生活に彩りを添える営みと言えるでしょう。
今日の日本語研究に目を向けてみると、各種のコーパスやデータベースの拡充によって研究手法は急速に多様化しています。特に、大量のデータが集まる近現代語の研究が著しく発展することになったのは、自然の成り行きでしょう。中世語・近世語を知るための国語資料の開拓も進んでいます。その中で、古代語についてはいささか状況が異なるように思われます。例えば、訓点資料は未公開のものが少なからず残っているようですが、訓点語に携わる研究者人口の衰微を嘆く声が聞かれるのが現状です。あるいは、『万葉集』や『源氏物語』など主要な文学作品についての国語学的研究には江戸時代からの歴史があり、蓄積が大きいということも挙げられるでしょう。それでも、古代語は現代語と大きく隔たっているため、その謎を解明すべく現在でも研究が続けられています。
そこで今回の小特集では「古代語の姿と声を探る」と題し、古代語における語彙、意味、語法、音韻、表現など様々な領域に関して、今どのようなアプローチが可能なのかを探ることとしました。用例の解釈に基づくオーソドックスな研究、コーパス等を活用した計量的な研究、他時代の日本語や方言との対照研究など、さまざまな観点からの論考をお寄せ頂きたく思います。なお、「古代」という時代の幅には立場によって捉え方に広狭があります。基本的に平安時代まで(十二世紀頃まで)の日本語に言及して頂くことを想定していますが、より広義の「古代語」に関する論考も歓迎いたします。会員の皆様の旺盛な投稿をお待ちしています。
機関誌『文学・語学』第245号・近代小特集原稿募集のお知らせ〔2025.6.28〕
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『文学・語学』では以下のような趣旨で投稿論文を募集します。締切は令和7(2025)年7月31日、掲載は第245号(2025年12月刊行予定)です。多くの投稿をお待ちしています。なお、応募の際には、小特集への投稿であることを明示してください。
新聞小説と読者
近年では、掲載小説が新聞の発行部数に関係することは少ないといっても過言ではありません。しかし、明治時代から大正時代にかけては、新聞掲載小説の評判が発行部数に大きな影響を与えていました。
これまでの近現代文学研究の領域においては、新聞およびその掲載小説について多くの研究が積み重ねられてきました。たとえば、高木健夫『新聞小説史』において、明治時代から昭和時代までの新聞小説の通史を執筆しました。関肇『新聞小説の時代―メディア・読者・メロドラマ』は、作者・読者・メディアの「生産と享受」という観点から研究されています。また、雑誌『文学』や『日本近代文学』では、新聞・雑誌メディアと文学の関わりについての特集が組まれてきました。また、近年では、一橋大学大学院言語社会研究科紀要『言語社会』第一三号にて組まれた特集「新聞メディアと文学 明治二〇年代」や、斎藤理生・杲由美編『新聞小説を考える─昭和戦前・戦中期を中心に』(パブリック・ブレイン)など、時代ごとに新聞を考察する特集が組まれてきました。
しかし、明治時代から現代に至るまでの新聞に注目し、新聞小説をメディアとの関係において考察する特集は、極めて少ないように思います。たとえば、新聞小説の本文の読解をはじめ、新聞小説の連載の仕掛け、本文と挿絵との関係、ゴシップ欄や文学関連記事などを含めた他紙面との関係、メディアの小説戦略や小説家によるメディア戦略、新聞のデジタル化の問題など、新聞をめぐる様々な問題を考察する余地は残されているのではないでしょうか。
また、近年の読者層の変容については、新聞のインターネット配信の利用者の増加や、デジタル配信(朝日新聞クロスサーチ、毎索、ヨミダスなど)による紙面利用など新聞をとりまく環境が大きく変わってきていることも関与しています。このような環境の変化によって、小説を読む読者が、ゴシップの発信者や文芸時評の批評家へと手軽に変貌できるようになり、SNS等で新聞紙面を対象として話題にすることも増えてきました。こうした読者の反応も考察の対象となるのではないでしょうか。
本特集は、近代から現代に至るまでの新聞小説をとりまく言説空間を、多角的にかつ通時的に捉え返そうとする試みです。