機関誌『文学・語学』第237号・中世小特集原稿募集のお知らせ〔2022.9.12〕
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『文学・語学』では以下のような趣旨で投稿論文を募集します。締切は令和4(2022)年11月末日、掲載は第237号(2023年4月刊行予定)です。多くの投稿をお待ちしています。
古典文学への誘いとしての中世文学
令和4年春より、高等学校国語科で「言語文化」教科書の使用が始まりました。先の「国語総合」教科書においても、『宇治拾遺物語』『沙石集』等の説話文学が古典(古文)学習の導入としての位置に置かれることが多く、いわば中世文学は、古典文学への入門の役割を担って来たとも言えるでしょう。
新しい「言語文化」教科書においても中世の説話文学を冒頭部に収めるものは多く、各単元に収められた文学作品は、「国語総合」採録のものと大きな変化はないようにも見えますが、単元に併載される古文の窓、古文学習のしるべといった項は、文楽などの古典芸能、奈良絵本のような絵画を積極的に採り上げ、写真や画像が多く載り、内容、扱う範囲はさらに多様になり、拡大しているようにも思われます。こうした項目がいかに扱われるかによって、これからの古典の教育は、様々に展開して行く可能性を秘めているとも言えるでしょうし、従来以上に、授業者の教員の知識や教養が教授内容に関わるのかも知れません。
中世文学の関連分野としては、小学校高学年の教科書に、中世芸能の狂言が多く採り上げられ、中学校教科書では二年次に『平家物語』が多数の写真や絵画資料と共に収載されています。また、古典文学に関連する内容としては、例えば、美術の教科書に絵巻物の特色や鑑賞方法を紹介する項があり、音楽の教科書では歌舞伎『勧進帳』の長唄を扱う単元なども見えます。
一方で近時、アニメ作品の『平家物語』(古川日出男訳原作・山田尚子監督)が公開され、サブスクリプションでも多く視聴されており、また大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(三谷幸喜作)が放映されることで、メディアでは中世が脚光を浴び、関連する軍記物語や芸能の作品にも関心が集まっています。
「言語文化」教科書には、古典文学の「翻案」としての小説、映画、演劇、漫画等の作品における再生、転生、継承を解説するものも見えます。すなわち、古典文学や歴史上の人物を扱った児童向けの図書等により、古典文学に最初に興味を抱いた人は、これまでも多くいたはずです。古典文学や古典芸能への接点、出会いは常に多様なかたちで存在しており、教科書や教室の外にも拡がっていることに、改めて気づかされます。
本小特集では、古典文学との接点、出会いの位置にある中世文学、すなわち古典文学への誘いとしての中世文学にいま一度、着目することで、現今における古典文学の享受、継承の諸相を捉え、また、これからの古典文学をめぐる教育の可能性や課題をも探りたいと思います。関連する研究分野は中世文学研究のみではありません。積極的な投稿をお待ちしています.