機関誌『文学・語学』第239号・近代小特集原稿募集のお知らせ〔2023.4.30〕
[会員限定]
『文学・語学』では以下のような趣旨で投稿論文を募集します。締切は令和5(2023)年11月末日、掲載は第239号(2023年12月刊行予定)です。多くの投稿をお待ちしています。
〈恋愛〉を問い直す
〈恋愛〉の概念は近代に入って以降、西洋からもたらされたものだとされている。特に一九九〇年代から二〇〇〇年代にかけては、カルチュラル・スタディーズやフェミニズム批評の視点から、さまざまな角度で〈恋愛〉についての検討が行われた。たとえば、渥美孝子ほか編『〈恋愛〉の近代文学』(双文社、一九九一年)や、雑誌『国文学 解釈と教材の研究』の二〇〇一年二月臨時増刊号「境界を越えて 恋愛のキーワード集」、天野正子ほか編『新編日本のフェミニズム11 フェミニズム文学批評』(岩波書店、二〇〇九年)などが挙げられるだろう。
一方で近年では、〈恋愛〉をめぐって従来とは異なる枠組みを含めた議論が行われている。特にいわゆる第四波フェミニズムが広がりを見せて以降、より多様な差別や搾取をめぐる問題意識に基づいた人権への取り組みや、インターセクショナルをめぐる議論が進められている。その中で雑誌『現代思想』二〇二一年九月号の特集「〈恋愛〉の現在」では、〈恋愛〉という概念そのものについて、ライフコースの多様化やポリアモリー、アセクシュアル/アロマンティックをめぐる研究動向も踏まえながら、社会科学の立場から〈恋愛〉を根本的に問い直そうとする方向性が示された。
それでは、現在の文学研究において、〈恋愛〉はどのように捉え直すことができるのだろうか。
本特集では、文学テクストだけでなくポップカルチャーも含めた〈恋愛〉を描く現代の多様なテクストの読解はもちろん、クィア・リーディングなどをはじめとする近年の理論を用いたテクストの読み替え、近代における〈恋愛〉言説についての再検討、あるいは近代以前の〈恋愛〉について現代の視点から捉え直すことも射程に入れながら、文学研究における〈恋愛〉をより広い視野から考えてみたい。
文学にとって〈恋愛〉は、常に古くて新しい問題であり続けている。この〈恋愛〉に関わる問題系を、今どのように考え、論じることができるのか。時代やジャンルに囚われない、刺激的な議論を期待したい。